久遠の記憶2


第10話:覇気


銀色の小宇宙と金色の小宇宙が闇を染め上げてゆく。冥界の天地が鳴動し、激しく揺れだす。ハーデスの周りを周回する星たちはますます動きを早めハーデスを守ろうとしていた。「汝らは下がれ。神を相手では消滅は必定だ」星たちに言い置きハーデスは臆することなく双子神の小宇宙と真っ向から向き合う。銀の翼が金の翼がそれぞれの背中にひろがった。「これは死の翼」とタナトス。「これは眠りの翼」とヒュプノス。「力を解放せし我らにお前は勝てぬ!」タナトスが吼え銀色の小宇宙が襲いかかる。「テリブルプロビデンス!」恐怖と破壊に満ちた死の力がハーデスを襲う。「誰も逃れられぬ死の力だ!ハーデス!」それはハーデスの全身を飲み込み確かに押し潰した。「ハハハ!棒立ちか他愛もない。冥界の全権など欲するからだ」高笑いするタナトス。「ふむ、私の力を重ねるまでもなかったな」どこか拍子抜けしたヒュプノス。「大言壮語をぬかしたわりには大したことのない。クロノスを討ったとはいえ原初神に叶う訳がない」タナトスは嘲笑する。「冥界の全権をよこせなど無理だ。ニュクスの意がなくてはな」ヒュプノスはハーデスのいた場所を見下ろす。そこは粉々にされていた。「ふん、ニュクスが地上生まれの神を相手にするか。…?」ヒュプノスが硬直している。「タナトス…ハーデスはいきている!」「バカな!粉々になったのだぞ!生きているわけ…」タナトスの喉がひきつった。闇の鳴動…神の魂も震わせる威圧感と共に漆黒の小宇宙が双子神の前に人形となって現れる。冥衣には6枚の翼が広がる。「誰が主かはっきりさせなくてはならないようだ」どこまでも澄んだ瞳に満ちるのはありえないほどの覇気。その覇気に双子神が震えた。「戦うのは本意ではないが、示しはつけねばなるまいな」冥界全土を漆黒の小宇宙が覆い尽くしてゆく。


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