小さく短い恐怖 4/3更新


第18話:『野球』


小学校から7年間続けてきた野球も、昨日の夏の甲子園予選準決勝で全てが終わった。

俺とリトルリーグからバッテリーを組んでいたSは二人で高校の野球グランドで最後の投球をしていた。

他の部員はおらず、辺りはもう薄暗くなっていた。

Sの投げる球はとても速く、もしあのエラーが無ければ甲子園まで行けただろう。

「もう少し野球をしていたかったな。」

Sのそんな言葉を聞いたら思わず涙が出てきた。

俺も、もっと野球をしていたかった。

すると突然俺の後方から「プレイボール!」とけたたましい声が聞こえた。

振り向いてみるも、後ろには誰もいない。

Sにも聞こえたらしく、首をひねりながら投球してきた。

次の瞬間、俺の顔面にバッターがバットを振った時の風圧がかかった。

ボールはSのはるか後方へと飛んでいった。

もちろんバッターボックスには誰もいない。

気味が悪くなった俺とSは最後の投球をやめようとしたがやめられない。

次々とSは投球し続け、俺は見えないバッターが空振りした球をキャッチしていた。

直感的にこの現象は見えないバッターから3アウト奪うまで続くことを悟った。

ランナーもいるらしくSの背後の暗やみを何かが動いているのを感じた。

ようやく20球目にピッチャーフライをSが取り、3アウトになった。

すると俺とSは体が自由になり、すぐその場を離れようとした。

すると俺は地面に置いてあった何かにつまずいた。



バットであった。




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