小さく短い恐怖 4/3更新
第5話:『屋根の上に』
夏休みに実家に帰った時のこと。
実家の隣には大きなお寺があり、昔はその庭でよく遊んでいたものだった。
夜になり2階の寝室で布団を敷いていると、ふと窓ガラスの向こうに違和感を感じた。
2階の窓からは隣の寺の瓦屋根がよく見えるのだが、右側の屋根の上に何かがいるのだ。
暗くて姿はよく見えないが、猫にしては大きいし、大型犬は屋根の上には行かないものだ。
それは蹲り、こちらを睨んでいた。
どこかで見覚えがあるような気がしたのだが思い出せない。
少し目を離すとそれは屋根の上から消えていた。
結局、それが何なのかわからずに私は寝た。
次の日の朝、両親のどたばたする音で目が覚めた。
何があったのか聞くと、昨日の夜に寝たきりだった隣の寺の前住職が亡くなったと言われた。
まさか昨日のあれは死神だったのだろうか。
そういえばあれに見覚えがあるのは昔曾祖母や祖父が亡くなった時だった。
私には死神が見えるのだろうか。
そう思いながら私はお通夜に出席して故人を見て驚いた。
昨日のあれは故人だった。
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