Dreames(夢.少女を改題)
第1話:たそがれて
男はやっとの思いで夕暮れ時を歩いていた。町は赤色に染まり、車は道路をひっきりなし走り、その道の横を足取りを重く、ぬかるみを歩くように引きずるように。今年50歳に成る西村健は今日会社での出来事を、沈む行く夕日に重ねていた。西村は片町株式会社の係長をしていた、片町株式会社は建設業を営んでおり、業界では中堅だった。
「西村君、明日から会社に来なくていいよ」
部長の井村が薄ら笑いを浮かべ、冷たく言い放つ。
「君があの書類に決済印を押したんだ、責任はあるんだ。」
『あれは課長の荒屋が君の決済印あれば、総て上手く行くと言われ、内容も吟味せず、押した目暗印』
俺は命令されて、押しただけなんだ。彼は自己弁護を井村部長にしようした。
「荒屋部長は懲戒免職になったよ、君も同罪だ」
井村部長は西村に指差した。
西村は気が遠くなりかけた、やがて彼は重い口を開く「明日、机の荷物を取りに来ます、今日は帰らせて下さい」
西村は会社を後にした、どこをどう歩き、何に乗って自宅近くまで来たのか、記憶なく時や道のりが過ぎた。やがて公園が目に入ってきた。
彼はベンチに腰掛けて、塞ぎこむ、やがて、帰宅途中の子供達が、公園の前を通り過ぎて行く、その中の女児を見ると、自分の娘もあのような、時期もあったのだなと、目を細める。娘の結婚式、娘の幸せそうな顔を自分は引きつり笑いを浮かべ、嫁がす慶び、無念さを胸に秘めて、花束を受け取った、だがその翌日に不幸が追い討ちを掛けた。妻が娘の結婚式を記に別れたいと言い出したのだ。妻は仕事優先の健、日曜祭日はゴルフ三昧で家計のやりくり、子育て総ては妻の美代子に任せたままで、家庭の事など、返り見たことがなかった亭主に愛想を尽かしていたが、片親だと結婚に差し障りがあると思い、娘の結婚式を今か今かと待ちかねていたと告白した。
「給料の大半を私に渡していた事で亭主の役割を果たしたと言えるの」
美代子は荷造りをしつつ、健に今までの不満をぶちまけた。彼女は西村健の元を去って行った。
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