完全否定


第3話:二つの世界の交差


そいつはいきなり飛び出してきて、ボンネットにへばりつくように倒れこんだ。「うわっ!」
急ブレーキ!…間一髪。
女だ。女と目が合う。
「あなた!此処は危ないから早く行きなさい!」
「何かあったんですか?」「何をしているの!?早く!奴らが来てしまう!」
顔立ちからして十代後半から二十代前半といったところか。それとずいぶん無駄に派手な格好をしてる娘だ。
(こういう案件は本来は管轄外だが今は自分が対応するしかあるまい…)
「とにかく危ないから、路肩に寄って」
「話を聞いて!」
「聞くから落ち着いて」
車を降りながら相手を諭す。何にしても冷静にさせないと話にならないようだ。ひどく興奮していて、よく見ると怪我もしている。
「警察です。怪我はどうなされたんですか?」
「こんな事してる場合じゃないの!…っ!?」
ふいに彼女が何かを感じたのかそちらに体を向け、身構える。
同時に数人の黒っぽい格好をした連中が躍り出てきた。見た目からして、この娘の関係者だと言う事はすぐに分かった。
「車に入ってなさい」
「何言ってるの!どいて!」
「いいから、ちょっと…」今にも突っ込んでいきそうな彼女を遮って車に乗ってもらう。これ以上、事を面倒にするのは止めて欲しいものだ。
「すいません、あなた達、この娘の知り合いですかね?何だか分からないけれど公共の場所でこうゆう事されると困るんですよ」
それにしても妙な奴らだ。薄気味悪い仮面を着けて警棒のような物を持っている。
「………」
返答はなかった。それどころか、ジリジリと距離を詰めてきている。腰を低く落として敵意むき出しだ。
「まいったな…話をしないと色い…」
突然の光線!驚いて身をかがめる。
「ホーリーシャイン!」
いつのまにかに車から降りたらしい。仮面の連中に向けて何か向けている。
「ちょっ!?何やってんだアンタ!」
持っていた武器を取り上げて、無理矢理に車へ押し込んだ。
相手も怯んで後ろに下がる。普段なら制圧も可能だが今は、このブッ飛んでる重要参考人を連れてる。
(こうなった以上をこのバカ連れて逃げるしかあるまい!)
車に飛び乗り、急いでバックさせる。
「離しなさい!止めて!」抵抗する彼女を必死に押さえ込んで一気に大通りに滑り込む。追いかけて来てはいたが、もう遅い。フル加速させて車列を縫った。 それを見て彼女も諦めたらしく、苛立ちながらも大人しくなった。      (くそっ、今日は何もないはずだったのに…ツイてないな…)        疲れたのか、結局少女は沈黙を破ることはなかった。


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