完全否定
第4話:形式的儀礼
本部に戻ってからの流れは全く予想通りのモノだった。奇抜な格好の少女に対する驚きと好奇心の視線。そして、同僚の『これはまた面白そうだ』と言わんばかりにニヤついた顔と、対称的に美人な顔に青筋を浮かび上がらせ、引きつらせている部長。 (マジにヤバいな、こりゃ…)
「神堂、ちょっと来なさい」 「はい…」
拒否できる訳もなく部長の部屋に通される。
柳 純子
29歳にしてこの部署の部長。才色兼備という言葉がこれほど合う人間も珍しい。エリートだが、話が良く分かると人望も厚い。
「警部、あのですね」
「あら、私昇進したのよ、警視にね。さっき辞令が来てね」
「おめでとうございます」「ついでに、あなたが女の子を連れて覆面で飛ばしてたという報告もあったわ。納得できる説明をしてくれるかしら?」
なるほど、はたから見ればまったくもってその通りだ。
「俺自身が納得できてないので上手く説明できるかわかりませんが…」
結局、部長には事件をありのままに話した。
「持ち物が気になるけれど犯罪性は低そうね。とりあえず事情聴取と所持品検査だけやってあなたが家に送ってあげなさい」
「分かりました。じゃあ、話聞く方だけ手伝ってもらえますか?灘さんも瀬里奈も出向でいないから女の人は今、部長しかいないんですよ」
「うっ…仕方ないわね…」「よろしくお願いします」真面目さがアダというか、なんというか。ホントは厳重注意でさっさと帰すか、刑事警察に引き渡せば良いのに…
「取り調べ室?」
「いえ、そこの応接間に待たせてます」
部屋から出ると周りが応接間のソレに少なからず意識しているのがすぐに分かった。応対していた、ガタイの良い壮年の捜査官がこちらに目配せして救援要請を出している。
「金井さん、どうです?」「勘弁してよ〜。俺こうゆうの慣れてないんだから」大の男がアタフタしてるのが可笑しくて、吹き出しそうになるが、他の捜査官もきっとこうなるだろう。犯罪者相手に使うスキルもこうゆう時は使えない。
「ありがとう、金井さん。あとは私達がやるから」
「柳部長、御苦労様です。神堂、お前覚えてろよ」
「ちょっと!何で!」
しかし、そう言いつつも金井さんが貧乏くじ引かされたのはちょっと同情した。そして例の少女の方はというと、リラックスした様子でオレンジジュースを飲み干していた。恐らく金井さんが気を利かせて買ったのだろう。部長は少女の奇抜な格好に唖然としていた。「大丈夫ですか?」
「手の掛かりそうなの連れてきたわね…」
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