完全否定


第5話:疲労するやり取り


無駄に宗教がかったデザイン、黒に青の縁取り、髪の色は青。
視線に少女も気付いたようで急に姿勢を正して座っている。
「初めまして。柳です。こっちがあなたを連れてきた神堂」
対面する形でソファーに座る
「今日の事についてあなたに説明して欲しいことがあるのよ。良いかしら?」
「…」
静かに頷く少女
「私の名前はセシリア・マーシャル。年齢は20。魔法議会直属の騎士です。この…」
「ちょっと待って。私は真面目に話してるの。ここが…」
「私は聞かれた事に答えただけですが?」
「でも事実じゃなきゃ意味がないでしょ?」
「私が冗談を言っているとでも!?」
「冗談以外の何だって言うの?」
激昂する少女に苛立つ部長。真面目過ぎて正面切ってしまう性質が玉に傷というか…
「部長、この際内容だけ聴ければ良いんですから落ち着いて」
ヒートアップしそうになるやり取りに、慌てて、間に入る。
「失礼。つい興奮してしまいました」
自称魔法使いも落ち着きを取り戻したようだ。
「じゃあ、俺から。あそこで何してたの?」
単刀直入に聴いてみるのが一番だ。
「私の任務は魔法を悪用する者達を処罰する事なんです。あなたが見た彼等もそれです」
「あぁ、なるほど」
目の前がクラクラするなんてありえないと思っていたが、たった今そんな感じになっている。
「でも、そんな大事な事、他人に話して良いの?」
プレッシャーを掛けるように少女の目を覗く。
「察するに、あなた達も私達と同じような組織だと思ったので」
人形のような茶色の瞳は揺れる事なく、真直ぐと見つめ返していた。本気なのが余計にタチが悪いというかなんというか。
「分かった。今日はもう帰って良いから」
これ以上は時間の無駄だ。「家は?また連中に襲われたら危ないだろうし」
あの調子でまた暴れられたら迷惑極まりない。すると、彼女は急に改まって立ち上がる。
「それで、折り入って相談が…」
「ん?何?」
「私、家がないんです」
「……」


第6話へ

第4話へ

目次に戻る
TOPに戻る
ISM Inc.