音楽隊
第2話:ロバと犬と猫
その鼻が探り当てた。二頭が出会った場所から、しばらく進んだ場所だった。深く茂った藪のなかに、一匹の猫がうずくまっていた。
犬は絶句している。「……何とも」
「すげえな」ロバは痛々しげに首を振った。
「放っといてちょうだい」猫は甲高い声をあげて抗議した。「あんたたちだって似たようなもんじゃない。何よ、オバケでも見るような眼しちゃってさ」
「これは失礼」犬は目を伏せる。
「これでもあたし、プライド高いんですからね」
挑むように宣言したあと、猫は態度を変え、小さく溜息をついた。
「そうは言っても、この恰好じゃあね。あーあ、せっかくの美貌が台無しだわ」
「失礼ですが」犬が口をはさんだ。「もしや、デサンという名に聞き覚えがあるのでは?」
猫の片方の瞳が、闇の中で光を放った。
「何よ、あんたらあいつの知り合い?」
「ある意味でな」ロバが答えた。「おまえも、俺たちのお仲間だ」
「我々はフレーメンの彼の家へ向かうところです。よろしければ――」
「行く行く!」猫はいきなり跳びはねた。「何よ、それならそうと早く言ってくれなきゃ! ああもう、時間を無駄にしちゃったわ。さあ行きましょ、なにしてるの、早く!」
焦れる猫に対して、ロバは冷静だった。天を仰いで喉を振わせると、犬がそれに合わせて吠えた。落ちつきを取り戻した猫は、普段は発情期にしか使わない声で、夜空に向かって喚いた。
「行きましょう」犬が言った。「猫殿、お先に。あなたは夜目が利くでしょう」
「今じゃそれも怪しいけどね」嘆きながらも、猫はしゃなりと身をくねらせ、先に立って歩きはじめた。
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