新、浦島太郎


第11話:さらば海底生活2


乙姫は「私達の秘密を知られてしまいました。浦島太郎さん、あなたはどうなされます」「俺は地上に戻るよ」答えを聞くと乙姫は悲しい顔をみせたが、俺の決意が固いのをみて、亀型潜水艦に乗せてくれた。俺は竜宮城を後にした。船は陸地に着き、光線を出し、俺を陸地に出してくれた。亀型潜水艦は静かに沈んいく。後には俺一人、またホームレス生活か、と考えてた。だが陸地は何だか前と様子が違う、辺りは総て砂だらけ、しばらく歩くがどこまでも砂。みると一軒家がある。家の前で戸を叩いた。「おや、おめいは誰だ」じいさんが出てきた。俺は浦島太郎だって言うと、聞いた事の無い名前だってじいさんが言うので、事のいきさつを話した。じいさんは目を丸くして言う。「あんとき、亀に連れて行かれたのは、おめいか?俺はあんとき、亀に麻痺させられた、中学生だ、あれから、もう70年経っているよ」じいさんは答えた。ええっ、俺としてはまだ1週間しか経ってないぞ、と思いつつ、乙姫が俺にくれた物、箱をとりだした。昔話なら俺は箱から出た煙りで、じじいになるんだな。俺は箱を開けた、と中には機械が有る。そこから、立体映像が出て、乙姫を映す。「これを見ている太郎さん、あなたは海に来る前の時から70年経っているのを知り、がく然とされているでしょう。海底生活と思われていたでしょうが、我々はシリウス星にいたのです。光速より、はやいタキオンを使い、シリウス星に来たのです。だから、地上では時が早く進み、帰って来た時には時間がものすごく経ってたのです。そして今あなたは地球上に着いた時には。」 乙姫の最後の言葉がよく聞こえない、なんだか映像も見ずらい。眠くなってきた俺は顔を洗おうと、さっきのじいさんの家で水をもらい、たらいにいれる。たらいに写る俺のすがたは、80歳を越える位のじいさん。「太郎さん、地球上に戻ると、過ぎた時間があなたに襲いかかります。つまり70年の時間が。」
おれは30歳からいきなり100歳位のじいさんになったのか。俺は海辺へ向かった、やはり俺には釣りして暮らすのが一番。海に見慣れぬ鳥がいた、鶴だった。鶴の鳴き声は辺りに響き、やがて飛び去った。それから、浦島太郎を見た者はいなかった、鶴になったと言う者もいる。
〈完〉


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