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第4話:命


 ある日の早朝、彼は家出した。
リュックサックにはバイトしながら貯めた50万と着替えが入っている。
彼は首都を目指した。
人の命を救うため。

 首都に行くには通常ならウィング(低空飛行車両)を使って行くか、運賃は高いが早く付けるロードウォーカー(高速移動車両)を使うしかない。

 だが彼はそのどちらも使わず、旧文明で使われたと言われるホイール(移動用小型車両)を使って行くのだと言う。

 彼はホイールを起動させる。ホイールが少し輝き、操縦席への扉が開く。ホイールの中は暗かった、だが彼が操縦席に座るとホイールの内部が明るくなった。

 彼はホイールの操縦方法を一通り確認すると、首都へ向かってホイールを出発させた。

 ホイールは順調に前へ進んでいる。ウィングより速いのが特徴だ。だがホイールは空を飛べない、だから川などに出くわすと遠回りするしかないのだ。

 車体の揺れが激しい。山岳地帯を移動しているからだ。山岳地帯を通れば首都へはすぐにつける。だが山岳地帯はウィングでも飛び越える事ができず、おまけに山賊がいる。だから普通は山岳地帯を避けて通るか、護衛を連れて越えるしかないのだ。

 ホイールの前に数人の男が出てきた。持っているのは対戦車砲とスティンガー(対人携帯銃)彼らは既にホイールを囲んでいた。

「車両から降りろ! さもないと対戦車砲をぶちこむぞ!」
リーダーと思われる男が叫ぶ。だが彼、車の中の男は無視して再びホイールを起動させる。そして呟く……。

「後部機関銃六門起動、上部対戦車砲二門起動、前部機関銃二門、対人火炎放射機起動」

それに反応して、ホイールから様々な兵器が出てくる。この兵器の数、たかが数人の山賊を脅すのには十分だった。

 山賊はホイールを見て慌てて逃げ出した。彼は息をはき、呟いた。
「ふぅ、まだ弾薬いれてねーっつーの」
彼はホイールの兵器をしまい、再びホイールを走らせる。

 目指すは首都『エデン』へ向けて。


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