ヴァディア第1章


第2話:始まり


姉と弟の世界創造主達は、新しい世界の栄枯盛衰を見守ってきた。
「人形を何回も作ってきたけど、すっかり染み着いてるね。お互いに殺し合うの」
別に嘆くでもなく、それが当たり前のように、彼は言う。
「修正する気はなかろう?アイドーネウスよ」
向かって正面、箱庭をはさんで向かい合う姉は叱る様子がない。
「人形の基礎は作ったけど、性質は定めてないよ。こいつらが自分達で本質を定めたんだ」
アイドーネウスは暗闇の瞳を細める。
「姉さんの箱庭だってそうだったでしょ?僕の箱庭に修正を入れても、染み着いたものは直せないよ。エリトリア姉さん」
「私とて、人形の本質を変える気はない。」
どうあがいても、白いままの状態を維持し続けるのは自分でも、他の一族の者達にも難しい。
操り人形でありながら人形どもはいっぱしにあがき、反抗する。
「世界は完成すればお前は壊す。」
「人形達にとって、どんな世界だろうとね。完成した世界なんてのは荒廃してようが、理想郷並みの清浄な世界であっても解釈は創造主にしか分からない」
破壊衝動、闘争本能、それらを自制しながら人形達が生きて築く世界の姿はどんな形だろうと、完成と判断されればゆらぎに帰るのみ。
「そういえば姉さんの人形達ってここに来ることがあったよね?」
こことは、2人の姉弟がいるこの闇の空間のことだ。
エリトリアは腕組みしたまま、わずかに笑う。
「ごく、たまにな。そういうやつらには驚かされたよ」
アイドーネウスはそれを聞いて肩を震わせ出した。
「面白いなぁ。それ」
破壊衝動、闘争本能をさらに利用できそうだ。


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