ヴァディア第2章


第1話:王都を目指す者


王都を目前に、母艦ゾディアックの指令室でモニターから、その美しい城都を第一王子ラーズベルトと、第二王子カーディスの王子2人が見下ろしていた。
ラーズベルトは21歳、カーディスは18歳。どちらも強国の王子であるという貫禄を備えている。
ラーズベルトは第一王子という立場とは裏腹の柔和な印象を受けるが、彼に拝謁した者は、真冬の氷月のような冷徹さを知ることになる。
実弟であるカーディスはラーズベルトとは正反対のいかにも野心家な印象を受ける。実際そうであるが、氷月のような一面を持つの実兄にはカーディスは逆らったことがない。
「厄介なのは、ガルテアの作った『ミネルヴァ』シリーズだったな」
指令室らしく簡素ながらもしつらえの立派な椅子に座り、ラーズベルトは頬に長い指を這わせた。
ガルテア王国のサーヴァントの中でミネルヴァは鉄壁の防御力を誇り、ひとたび味方の援護に回ると敵はなす術がない。ネプトディアは、永い間ミネルヴァに苦しめられてきた。
ミネルヴァをみた者は武装した女神のようだったとほのめかしていたが実物を見たことのないラーズベルトには冷笑の対象でしかない。
何が女神だ…我らに使われるサーヴァントには過ぎた呼称だ…と。
「兄上、そのミネルヴァのことで、兄上にお話ししたいことが」
傍らに控えていたカーディスが進み出て口を開くと、話しを聞いていたラーズベルトは紫紺の眼を細めた。
「お前に任せよう。やってみせろ」


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