ヴァディア第2章


第12話:凍る砂


カルシールがカリューナ・クロイツフェルトととして、ネプトディアに移り住んで3年が経過していた。事象変化補助装置〈エーテルデバイス〉の新型開発に『協力』しサーヴァントに、より改良されたものを組み込み、人が扱う物にしても、籠手のような代物からまるでアクセサリーのような小型化が可能になるよう、調整が繰り返されていた。
ミネルヴァに乗り込んだカリューナは、実験場で数体の実験用サーヴァントと模擬戦を行っていた。カリューナの『協力』でエーテルが扱いやすくなったサーヴァント達のエーテルは今までとは比べものにならなくなっていて、研究員や技術者達を驚かせた。
しかしエーテルデバイス自体不要なカリューナには、その威力は柔らかな布のように感じられた。
火炎弾も雷撃も、ミネルヴァには届かない。障壁を展開し、消し去っていた。
悠然と佇むミネルヴァに実験用サーヴァントの一機がマテリアルソードで斬りかかった。
実験用要員の中に、クロイツフェルト家の御曹司が素性も解らない輩を養子として迎えたことを不満とする者が実験場という場を利用してミネルヴァごとカリューナを始末しようとしたのだ。
実験場の経験しかないカリューナはミネルヴァごとカリューナを貫かんとする切っ先を危なげにかわしつつ、ミネルヴァに常備されている槍を引き抜く。通常は柄しかないが使用時には穂先と石づきが伸びる。
剣と槍の打ち合いとなり、経験の少ないカリューナはミネルヴァの装甲をかすめる切っ先をかわすので必死だった。
やがて打ち合いの中でそこに殺気があることを気がつく。
水平に円を描いた一線が槍を跳ね上げる。取り落とすまいと槍を握りしめ踏みとどまった所に、左脇腹めがけ剛撃が叩き込まれた。回避は間に合わず腹部コクピットに激しい衝撃が襲う。
「このままじゃ殺される…」
グリップを握るカリューナの全身を汗が流れる。
警告音がコクピットに鳴り響く。はっと正面モニターを見た先には雷撃エーテルと剣撃の波状攻撃がミネルヴァを襲わんとしていた。
やられる…そう覚悟した時、周囲を猛烈な凍気が覆った。


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