ヴァディア第2章
第13話:凍る砂・2
辺り一帯の空間が一気に凍てついた。まるで氷の檻に閉じこめられたように。
ミネルヴァを除いて、そこにいるサーヴァントも凍てついた空間に閉じこめられていた。
ベースで事態を傍観していた研究員達は目の前で起こった現象に騒然となった。かろうじてモニターは起動しているがあまりの凍気にノイズが混ざりだし、状況が見づらくなっている。
「エーテル能力者の怖い所だ。機械に頼らないから、本来の事象の力を行使できる」
眼鏡を押し上げながら、まだ若い科学者フェリオ・グローバルはさも楽しそうに笑う。
「しかもカリューナ君の意志で引き起こされたんじゃない。…これは生存本能だ」
自分の書いた論文は誰も認めようとはしないが、この現象はけしてフェリオの、彼の妄想ではないと確信できた。
「命の危機に直面した時、人は脳のリミッターが解除されることがある。ミネルヴァ、そうしたんだろ?」
右往左往する現場の中で、フェリオただ1人が落ち着き払っていた。
やがて変化ないように見えたが、空間全てに亀裂が走りミネルヴァを除くサーヴァント全機が一気に砕け散った。氷の粒が辺り一帯に散らばった。
「以外にエグいことするね。」
まるで物語に出てくるコキュートスのようだ。氷の檻に放り込まれれば二度と出られない。
事態を傍観していた研究員達はその光景をただ眺めるしかない。ミネルヴァと通信を交わそうとしているが、音信不通で慌てふためくオペレーター達。彼らを横目で見やりながらフェリオは槍を握りしめたミネルヴァを凝視した。
「本質のなせる技とするなら、原点回帰…その可能性もあり、か?」
サーヴァントの本質は移動宮の守護と許しなくそこへ入ろうと道を開けたもの達の排除。生存本能を刺激して引き起こされた現象は、果たしてこちらの駆逐へとフェイズを進めるのか。
しかし、結果を見るのはかなわなかった。ミネルヴァの全身がガクガクと震えた後、機能を停止してしまったからた。
第14話へ
第12話へ
目次に戻る
TOPに戻る
ISM Inc.