ヴァディア第2章


第18話:叔父と甥


ディオールを伴って宮殿内に戻るルヴィスを年配の男が待ち受けていた。ルヴィスの叔父にあたるディアス・グレイシズ侯爵だ。
「庭遊びもほどほどにせい。やはり第3王子かと侮られるぞ」
「甥に会って言うことは他にないのですか?叔父上」
ルヴィスの母親であるルミナスの実弟であるディアスが、ルヴィスは嫌いだった。第1王子として生まれたラーズベルトと第2王子カーディスを追い落としてでもルヴィスを次の王に仕立てようとルミナスに執拗に話しを持ちかけているのを知っているからだ。ラーズベルトとカーディスは側室の子だった。ルミナスがネプトディアの正室でありながら長らく子ができずにいた事もあって跡取りを望むネプトディア側が側室を取ったのだが、その側室が男子を2人も産んだことでルミナスは正室の立場をすっかりなくしてしまった。ルヴィスは時が経った頃にやっとルミナスが授かった子なのだ。側室側の画策もあるが年長の序列で長男であるラーズベルトが次の跡取りということになった。
ルミナスは跡取り争いは国が荒れる元になるとあっさり引き下がり、再三くる実弟の話もはねつけていた。
どうせまた失敗したんだろう。心の深い所でルヴィスは嘲笑した。
「庭遊びはとっくに終わらせました。これから第3王子としての勉強をこのディオールに指南を請うた所です」
さらりとルヴィスは言い後ろに控えたディオールはきょとんとしたがすぐに一礼で応えた。
「お前の母からよく聞いている『いいお友達』だそうだな」含みのある言い方にルヴィスは言い返そうとしたがすぐにディアスが話しを続けた。
「庶民的も結構だが私がお前に相応しい『お友達』を紹介してやろう。あまりにもお前は社交的ではないからな」
頼んでもいないのにルヴィスの同い年な『友達』の斡旋をまたしてくれたらしい。ルヴィスの『友達』を増やすことで自分の味方になる貴族を増やす腹だろう。会うだけは会う。交流が深まるか否かは会った者どうししだいだ。またいつも通りにしかならないのに。
「叔父上には感謝しています。それで今回はご子息かご令嬢のどちらです?」
「クロイツフェルト家のご子息だ。ネプトディアの誇る名家だぞ」
こんどはクロイツフェルト将軍に取り入り作戦か…冷光を瞳の奥に隠してルヴィスは叔父に一礼した。


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