ヴァディア第2章
第19話:ルヴィス・ネプトディア
クロイツフェルトの子息と対面する段取りを叔父はさっさと調整していた。相変わらずの準備の良さにルヴィスは笑うしかない。まるで見合いでもするかのようなスケジュールの調整の仕方だったからだ。
「貴族の数を味方につけて、兄上達を追い出したいか」
数を味方につければ発言力は増すだろうが、ルミナスが継承争いからあっさり身を引いているし、側室側の方でも折れるつもりはさらさらなかろうから、叔父にどれだけ味方する貴族がいることか。
「叔父上の顔は立てる。甥としての仕事だ」
対面の場はルヴィスの宮殿の庭だった。しかも見事な晴天。まるで天候まで叔父と話し合ったかのようだ。
随行者にはディオールを選んだ。友であり、信頼の置ける部下だからだ。
かれを伴い時間通りに庭へ赴くと、クロイツフェルト将軍と共にテーブルにつくルヴィスと年の頃の同じ子供が目に映った。金色の髪に深い緑色の瞳が白い顔を際立たせていた。儚い美少年というやつだが、ルヴィスは将軍子息と聞いていただけに、子息らしくない外見に一般的な驚き方をしてしまった。
叔父はクロイツフェルト親子の接待を駆って出ていたのか2人の相手をしていた。苦笑いを隠して、ルヴィスはテーブルの客人達に歩みよると3人が王子の姿に立ち上がり、一礼する。
「クロイツフェルト将軍、久しぶりだな」
「は、ガルテア戦役から長らくお会いできませなんだ」
どこか話し方に淀みあることをルヴィスは聞き逃さなかったが、この席では追及するのはやめにした。
「そちらが将軍の子息か」
「はい。カリューナと申します」
父親に促された子供は改めて一礼した。近くで見ても父親には似てない。
「カリューナ・クロイツフェルトです。殿下にお会いできて光栄です」
ルヴィスは鷹揚に頷いた。
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