ヴァディア第2章


第23話:嘲笑


どこから聞きつけたのか、カリューナがルヴィス王子に会ったその日の夜に、カリューナはカーディスに呼び出された。その日はルヴィスの宮殿に宿泊する手筈になっていたが、上手く宮殿から第2王子の私室へ速やかに通された。
「私は常に監視されているのですか」
「心外な。稀代のエーテル能力者の警護と言って欲しいね」カリューナの詰問にもカーディスは余裕で一笑した。
「何もかも承知で来たんだ。多少の不自由は容認してると思ったが」
「プライベートも、ですか」
「おまえは只のエーテル能力者じゃあない。サーヴァント適合者でもあるし…なあ?」
豪華な椅子に体を沈めたカーディスは端麗な顔に意地悪な表情を作る。
「グウィネスを忘れたわけじゃあるまい?奴にお前の事を任せてある。どこにいても視られてるんだよ」
「………………!」「ふん、グウィネスは相当嫌いか。この程度で感情的になるんじゃ、騙し討ちなんて腹芸は不可能だぞ。「王子」さま」「…ッ!」
「あの弟がお前をガーディアンに任命するんだってなぁ。で引き受けるのか?」じろりとカーディスが笑いを含んだ眼差しを向ける。
「ミネルヴァやお前の事を公にでもしたいか?ミネルヴァが『S』系だから?」まるでグウィネスが報告したかのようなカーディスの指摘にカリューナは言葉に窮した。その様を見たカーディスは嘲笑する。
「悲劇の王子様は頭がヌルくできてるな。『S』系ならお前以外に適合者は出て来ないなんてなぁ…ヌルいんだよ。自惚れるな」
反論しなければ…しかし思考はぐるぐる回り収まりがつかない。
「俺の弟を利用して全てを明らかにか?ネプトディアにミネルヴァの適合者がいたとしても、不思議はなかろうに」
カーディスは嘲笑を消さない。
「引き受けても一向に構わんよ。お前が思ってる程、ラーズ兄上も俺も、それとルヴィスも」
端正な唇が残忍に歪む
「甘くはない」
カリューナはただ拳を握り締めていた。反論できない…グウィネスに監視され、内面を全て見抜かれる自分がいかに弱いかを証明してしまった認めたくない現実だった。
「イジメ過ぎかな?将軍補佐官殿?」
からかうようなカーディスの言葉に忘れようのない足音が重なる。跳ね上げた視線の先には奴がいた。
「…グウィネス!」


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