ヴァディア第2章


第24話:グウィネス・スピネル


錆色の瞳を持つ男をカリューナは深緑の瞳を震わせ睨みつける。
「繋がっていたのか?カーディス殿下と」
「繋がる?私は自らの血統に従ったまでにございます」
泰然自若としながらグウィネスはさらりととんでもないことを言う。さりげなさすぎてカリューナは彼が何を口にしたのか、理解が遅れた。「我が祖先は元々ネプトディアを長と定めていました。聖獣ジヤフと聖獣カルシーラを共に奉り、祭祀も行っていた神官の血統です」カリューナは息を飲むしかない。「主義主張及び意見の相違で2つに別れた『名も無き部族』の長の権力はネプトディア側にありました。我が祖先は内側からガルテアを壊すために、権力争いが始まりだした500年前のあの時にガルテア側に従うふりをしてきたのですよ」細い錆色の瞳はなんの感慨も浮かべてはいない。「絶対防御力を誇るサーヴァント『ミネルヴァ』の適合者が現れるまでの500年は長かった…今までにも適合者は現れましたが、あくまでもS型サーヴァントの欠落情報を補完するためのパーツに過ぎなかったのですからね」
カリューナとそしてカーディスは愕然とした。カーディスの動揺は言わずもがなだ。グウィネスはとんでもないことを言ったのだから。S型に適合した者達が、欠落情報を補完するための情報パーツだと、言ったのだから。「今いるS型の適合者は、S型の欠落情報を補完するためだけの情報因子に過ぎません。サーヴァントはあれでもまだ、完全に再生してはいないのですからね」
「グウィネスよ、それは神官の血統が継ぐ伝授なのか!?」顔色をかえるカーディスにグウィネスは「サーヴァントは『聖骸』。補填できる情報がなくては今後の体の維持ができません」
「体、だと?…神官の血統は何を知っている!」
「そういえばあなたは何もご存知ではありませんでしたな。兄君も」
薄い唇がきゅっと歪む。
「500年、我らがネプトディアがガルテアに侵攻するときを待っていました。情報を補完したミネルヴァと適合者の揃ったこの時代に侵攻するこの時代をね」
「俺が貴様に接触してくるのも、500年の計画だと!?」
「貴方ではなくとも、ネプトディアの者というのが重要です」
「父上は…ネブラスカは知っていたのか!?」
「我らが王たるかたが知らぬはずはございません」


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