ヴァディア第2章


第25話:神官の系譜


「ミネルヴァは500年かけて情報を補完され、完全に再生しました。適合者もいる。ネブラスカ様の歴代のネプトディアの悲願の成就が叶ったのですよ。加えて、カルシール様がルヴィス王子のガーディアンとは願ってもないこと」
「グウィネス…貴様は一体」
変な気をカルシールに起こさせないように釘を刺すだけだったのに、グウィネスは衝撃的な事を一部とはいえ口にしている。
「私は神官の血統としてネプトディアのために動いています」
錆色の瞳は使命を遂行することになんのためらいもない強い色を浮かべていた。「カーディス様、カルシール様は我らがネプトディアの重要なファクターです。これでお分かりいただけましたでしょう」
「納得いくか!父が知っていて、何故子である俺が知らない!…グウィネス、兄上はご存知なのか?!」
「ラーズですか…どうでしょうねぇ。あの方は本心がうかがえませんからね。しかし、カルシール様を重要視なさっておられますから、見解に相違はないでしょう」…それと…とグウィネスは続ける。
「これはあなたの潜在意識に刷り込められればそれでいいのです。」
グウィネスの足下を中心に幾何学的紋様が幾重も広がった。2人とも声も出ない。
「カルシール様をあなたも見守るのです。あなたはカルシール様を軽く見ておいでですから」
紋様は異様な圧迫感と恐怖を2人に押し付けてきた。水面を行く聖獣ジヤフのイメージだとは2人には理解できなかった。
ついにカーディスが異様さに耐えきれず絶叫した。それでもグウィネスは錆色の瞳を揺るがさない。このままではカーディスは精神崩壊する…がグウィネスはそこで笑った。
紋様が消滅した。グウィネスが消したのではない「この方に害をなすなら排除する」深緑の眼差しは燐光を放ち、威圧感さえも放つカルシールだった。
「上手く機能しましたか?それとも本質ですか?」
期待通りか否か…しかしグウィネスは笑みを絶やさない。
「仕掛けたかいはありましたね」
泰然とするグウィネスの全身を凄まじい圧力が締め上げてきた。重力捕縛…逆らえば肉塊は必死だ。「いい人形ができましたね」こともなげにグウィネスはカルシールを跳ね飛ばした。


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