ヴァディア第2章
第27話:レナス
「神官の末裔とはいえ、やってくれるわね。大事な門番なのに」
唐突に響く若い女の声に、グウィネスは泰然としたまま波紋を静めた。
「ここに来てお小言ですか?レナス・アーヴェ」
ピクリともしないカリューナと、放心状態のカーディスを錆色の瞳に映したまま空間に声を投げる。「500年に渡る計画だもの。覚醒を妨げるのはいいけど、いじめすぎよ」
笑い含みの声とともに20代前半とおぼしき女性が現れる。
闇色の髪は白い頬を包み込み、その美貌を際立たせる。瑠璃色の瞳がグウィネスを見やった。
「ルヴィスのガイアードなんて、面白いこと考えるのね」
「私は妙案だと思いますよ」
「起こすつもり?ルヴィスが昔棄てた『アンフィスバエナ』を」
「ミネルヴァは情報を全て補填しましたからね。盾の次は剣を揃えないといけないでしょう」
「錆びた剣を守らせると?」
「自らの半分を棄てた人ですからね。情報は補完されたままです」
「ミネルヴァが枯れるまで『激務』をさせてくれたバカに何を求めるの?」
「貴女はコアを変えるつもりでアンフィスバエナを残したのでしょうが、ミネルヴァにはあのままの方が良いのです」
笑いながらキツい事を言うレナスにグウィネスは苦笑いする。
「ネブラスカは分かってくださいましたよ」
「ネブラスカが?」レナスは瑠璃色の瞳を軽く見開く。
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