ヴァディア第2章


第28話:冥海の王と闇の代弁者


静かすぎる程の静寂に満ちた『そこ』は、ネプトディアの城の地下の最深部にあった。
深すぎる蒼の光は黒みを帯び、水の対流のような、水面の揺らぎのようなゆったりとした動きで漂い、まるで水中に居るかのような錯覚を覚える。
その中央に佇むのは重厚な祭礼用のローブを纏う長身の人物で、その背中にはネプトディア王家の紋章と聖獣ジヤフの聖印が刺繍されていた。
「体は捨てても、結局は引き合うようだ。ミネルヴァとアンフィスバエナは」
独り言のようにも取れる呟きは、空間を満たす揺らぎに向けられていた。
「うん、だからアンフィスバエナは私の系統に生まれるよう頼んだのは、間違いではなかっただろう?」
若い男の声だか、素顔は仮面に覆われていた。
「剣は打ち直せばまだ使える。楯には必ず守らせる。あの時みたいにはさせないよ。ジヤフ」
声は笑いを含んだまま、重厚なローブをさばいて、仮面の男はその揺らぎの闇にうずくまる影に近寄った。
うずくまるのは抜け殻のサーヴァント。
しかし装甲の質感は金属とは思えない質感だ。
抜け殻のサーヴァントに仮面の男は手袋に包まれた手をそえた。
「思いもよらないだろう?私が君の親になるなんて」
サーヴァントに当然反応はない
「私はネプトディアの王にして聖獣ジヤフに仕える者。ネブラスカ」
仮面の奥の瞳がどこか怒りを浮かべ抜け殻を睨む。
「君は君自身に再び会うよ。だって、魂と体は引き合うのだからね」
もうすぐ聖獣ジヤフの祭祀がある。
その時開かれる庭で適合するとシナリオは出来ている。
「私は、闇の代弁者でもある。わすれてないよね?アンフィスバエナ」


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