ヴァディア第2章


第29話:開かれる庭


「新しい祭礼用の衣装の出来が楽しみだな」
ルヴィスは衣装の仕立てのために、体のサイズを御用達の仕立て屋にきっちり測られた。
一々祭礼の度に作っては税金の無駄使いだろうに、威厳や体裁のために無駄な衣装が増えていく。
「お前は正室の子だ。側室の子に過ぎんあの2人に見劣りすることがあってはならん」
「…だからと言って、道化みたいにはなりたくありませんが」
やっと仕立て屋から解放され辟易しているところに、立ち会っていた叔父がさっそく口を開いてきた。
「扱いは第3王子なのだ。ここで世継ぎの威厳を周囲に見せつけねば、ラーズベルトに全て奪われるぞ」
「……私はどうやっても、道化になりそうな気がするのですけどね」
歳もあるが、ラーズベルトは第1王子に恥じない貫禄と威厳を兼ね備えている。ゴテゴテ飾り付けた衣装を纏ったところで、中身がなければ滑稽な道化でしかない。
ラーズベルトの存在感は、ルヴィスとの歳の差や片親の事などを一蹴してしまうほどだ。
あまり会う機会がないが印象は温和な兄、しかし兄弟というよりは他人という感覚しかない。
「兄上達には祭礼の日か、晩餐会でもなければお会いできません。ゆっくりお話をしてみたいと思っています。叔父上」
爽やかに言い放つルヴィスに、ディアスは渋面になる。
「全くお前は…姉上、お前の母親もだ。宮廷の陰でなんとあざ笑われていると」「私も母上も、興味がないのです」
やる気がなくてはしくじるだけ。上手く行くわけもない。
「私はこのあと陛下にお会いしますのでこれで」
「こっ…!」
口を震わせる叔父を後にルヴィスは父親に会うため、部屋を後にした。
祭礼の日に、ガーディアンに任命したい2人の話しをするために


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