ヴァディア第2章


第34話:祭礼の庭


聖獣ジヤフ祭礼の日、空は晴天、うってつけの日和だ。
黒を基調とした礼服に身を包んだルヴィスは、カリューナを伴ってやってきたクロイツフェルトと対面していた。
「殿下のおかげをもちまして、本日は我が一族にとって名誉な日にございます」
青を基調とした礼服を着た親子は深々一礼した。
王族のガーディアンに選出されるのはこの上ない名誉な事だ。クロイツフェルトは朝一から面会を申し出て、礼を述べに来たのだ。
カリューナは金髪に飾り紐で髪を結っていた。それでも女々しさは感じられないよう、まとめてある。
気のせいか、白い顔が更に白い気がするが。
「ご子息をお借りする。カリューナの身の事はこちらでよくするつもりだ。」
将軍はさらに一礼する。「ところで…」「クロイツフェルト殿、よう参られた!」
どこからでも沸くのか、ディアスが意気揚々とやってきた。カリューナの事を聞くに聞けず、叔父をたしなめるしかなかった。
「叔父上…私に恥をかかせないでください。私の客ですよ」
しかもここは自分の宮殿だというのに。地獄耳かそれとも鳥並の眼力があるのか。
「ルヴィス、クロイツフェルト殿といつの間に話しを交わしていたのだ。知らなかったぞ」
随分顔が紅潮している…そんなにパイプが出来て嬉しいか。
「ディアス卿はお耳が早い」
律儀にクロイツフェルトは応じたがルヴィスの瞳はしらけきっている。
「叔父上、いえディアス侯爵ここは慎まれよ。私の来客である」
がらりと王子の顔にかわりピシャリと言い放つ。
少し黙ってろと、本当は言ってやりたかったのだが。
「1人増えましたが、祭典まで時間があります。ゆっくりしましょう」
年端もいかない甥に叱られ、憮然とするディアスは無視してじつに爽やかな笑顔をルヴィスは見せた。


第35話へ

第33話へ

目次に戻る
TOPに戻る
ISM Inc.