ヴァディア第2章


第35話:聖獣の庭


その時は来た。祭祀に列席するネプトディアの王公貴族達が扉の無いアーチ型の門をくぐっていく。門の解放はまるで沸きだす泉のような感覚だった。
ガルテアでは王宮の最奥で行われていた。美麗な聖獣カルシーラの彫像をカリューナは覚えていた。
門を抜けてカリューナは息を飲んだ。そこは一面の海原、そして華麗な祭壇、虹色に煌めく幾つもの浮遊する水晶群。
…そして、そこに満ちる強い力。ゆらゆらと漂う七色の光輝。
聖獣ジヤフ…肌に感じる圧倒的な神気にカリューナは軽い寒気すら覚えた。
「大丈夫か?」身体をすくませるカリューナに義父が寄り添った。カリューナは言葉が出ず頷きで応じた。
祭壇にはネブラスカが歩みより、ズラリと神官達が続く。
「我らの祖たるジヤフよ。まずは我が子ルヴィス・ネプトディアのガーディアンとしてクロイツフェルトが子息カリューナ・クロイツフェルトを承認したジヤフの証をかの者に授かれたし」
朗々とした美声が神域に響くと光輝が一段と強く光だす。
「カリューナ、祭壇へ」クロイツフェルトが不安そうな息子に強く頷き、送り出す。
王公貴族達の視線を受けながらカリューナは祭壇へ行く。階を上り祭壇の前に。ネブラスカが手袋に包まれた手を差し伸べた。「ジヤフの声を聞きなさい」


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