ヴァディア第2章


第4話:王女の怒り


エフェミアはガルテア王国の第一王女にして、次期国王だった。 ガルテアでは男女性別を問わず第一子が王位を継承する。 母親違いの弟であるが、第一王子のカルシールをとても可愛がっていた。一見可憐なお姫様だが、水面下で王位継承権をめぐり暗闘する母親達の派閥から守ってきた。
カルシールも幼いながらに自分と姉のことで大人達がピリピリしているのを理解している。だから早く大きくなって姉を助けると決めていた。
サーヴァントに乗るための鍛錬も少しずつ積んでいた。エフェミアの方は弟の身を案じるあまり過保護ともとれるほど心配していた。適合するサーヴァントがなかったため安心していたが、こんにちになって弟はあるサーヴァントと適合した。それがサーヴァント『ミネルヴァ』だ。
味方の援護に回れば勝利確実とされる美しき機体。しかし数百年に渡って適合者が現れずお蔵入りしていた。
そして王子に出陣を国王に押し進めたのが、グウィネスという名の男だった。僅か7歳の弟に戦場へ行かせるよう国王を唆したグウィネスをエフェミアは自らの執務室に呼びつけた。
可憐な美貌に怒りを滲ませ、王女は悪びれた様子もないグウィネスと対面した。「姫様のお怒りはごもっともですが、適合者の現れたミネルヴァを使わずしていつ使うのです?」
「グウィネス!それが本音かっ」
ばん!と執務室用の机が音をたてる。
「幼子を戦場に送る国など…護衛をつければ大丈夫などと単純極まりないぞ」
「姫様こそ、弟君のことで感情的になられるのはいかがと」グウィネスは執務机を挟み、エフェミアを冷ややかに見る。「ミネルヴァの適合者が、我れらが国の王子で幼子であることは外には漏れないようにしてあります。ネプトディアもミネルヴァに適合者が現れたことで、警戒心が生じたはず。戦闘の抑止力を背景に、ネプトディアと和平交渉に持って行きたいのです」
「…暗愚だな。結局はネプトディアとの交渉が決裂したさいには味方を守らせる盾に使うのではないか」
グウィネスはエフェミアの言葉に否定しない。
「何事にも、抑止力は必要です。保険はかけてこそ意味があります」
エフェミアはグウィネスを紅の瞳で睨む。だれもが国王をグウィネスが唆したと陰で言う。
和平交渉するとは言うが、エフェミアはグウィネスが信用できなかった。


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