ヴァディア第2章


第6話:包囲2


カーディスはゾディアックに収容された優美な機体を見上げ、その美しさに見入っていた。まさしく武装した女神だ。ミネルヴァSの優美さを見ると先祖たちが苦しめられてきたとは信じがたい。まあ、戦わずに手に入れられたのも入念に、内通者を通して適合者ごと手に入れる算段をしたからだが、適合者がガルテアの王子であったのは驚いた。しかも純粋なエーテル能力者というのが願ってもない幸運だった。後はグウィネスによって、ガルテア侵攻が開始され、ガルテアは陥落し、戦いの中でガルテアの王族はそれぞれネプトディアの用意した邸宅に軟禁された。エフェミア王女を除いて。
護送中のエフェミアをガルテアの残党達が奪還を図ったのだ。そして身柄を巡って激しい攻防の末に、見事にエフェミアを奪われるという醜態を晒した。
追っ手を向けようとしたが、足取りを見失ってしまい、ラーズベルトから叱責を食らってしまった。「見失ってしまったのなら、奴らが動くまで泳がせておけ。情報を集める事を怠るな」とラーズベルトは言いおいて、制圧後のガルテアの後処理に携わった。
カーディスは、グウィネスと彼に従った内通者には、それなりの地位を保証しておいた。利用するだけして捨てるでは、兄の権威に泥を塗ることになる。兄を敵にはしたくはない。
ガルテアは極力サーヴァントのシリーズ化を避けてきた。聖骸への敬意と畏怖があり、純粋なサーヴァントを復活させてきたため、どうしても適合者待ちになる。サーヴァントをシリーズ化しても、ネプトディアとの差は実は開きつつあった。純粋なサーヴァントだけではそろそろ限界もあったのだ。そのガルテアにグウィネスらは見限りをつけた。
カーディスはそれを非難しない。自己保身は当然だ。戦争に敗れ全てを失いたくはない。
奇麗事で地位は維持できないのだ。
そしてネプトディアも、ミネルヴァSと適合者であるガルテア王子に『協力』を仰ぎ、サーヴァントにより改良された事象変化補助装置エーテルデバイスの開発に着手することになるだろう。
かつての人が失ったエーテル能力を装置を通す事で操ることができるが、装置の改良がなされれば、より簡易的にエーテルを行使できるようになる。
ネプトディアが帝国として建ち、6大陸を統一するのだ。
世界ヴァディアは1つに生まれ変わる。
世界とは力で変わり、力で創られる。
いくつも繰り返されてきた世界の成り立ちだ。
奇麗事など存在しない。
カーディスはミネルヴァのまえで笑う


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