初夜の涙


第2話:サタデイナイトのお愉しみ


あのね、人間は考えるために生まれ、愛するためにこの世にいるのよ。愛は人
間を幸福にしてくれるわ。

こういうのって、「愛の情念」ていうのよ。幸福を求めるのは生きている
証拠で、それは結局、快楽を求めるのよ。

男はつまらないわね。一箇所しか快楽するところがないじゃないの。
そのたりない分、女を快楽させることで埋め合わせるのね。

そう、女はどこもここも快楽の坩堝(るつぼ)があるの。でもね、ひとりでは寂しくて役に立たないわ。
坩堝ってわかる?そこをどんなにあつく熱してもこわれないの。あなたの直火(じか
び)が欲しいのよ。好きなのよ。あなたの直火が好きよ。まっかに熱した肉ボーよ。
それ、いきなりはいけないわ。

わたしの坩堝でもっとあつくあつくするから、さあ、私にまかせて、
それを、先に私の掌(てのひら)においてみてちょうだい。
あーら、ぴんぴんではちきれそーだわ。青筋たてて、さきっ
ぽに数ミリのヴァギナそっくりさんからなにやら透明な体液
があふれそうよ。

あなたの、長すぎるみたい。普通、13センチっていうわね。

女のからだは、あなたに触発(しょくはつ)されてこそ、は
じめてめらめらと燃え出すのよ。男の人の熱した肉ボーはラ
イターよ。ボッと発火させてくれるわね。

でも、ものごとは、最初が大切だわ。
さあ、私のお隣にすわって。これからふたりは親しく交わる
のよ。ベッドにいきなりは早すぎるわ。そんな、あわてない
でよ。わたし逃げはしないわよ。

いま、私には二つの心があるわ。一つは、エスプリ、んーなん
ていうかしら、心霊的な、この世にない超越的な気分、
もう一つは繊細の心ね。

私、酔いたくなってきたわ。そこの「響」とカップを取ってくださる?
いえいえ、氷も水もいらないわ。そのままでいいのよ。
これ、シングルを二杯、それからアルコール度が高いキルシュ・リキ
ュールがいいわ。これね、ちょっとばかし私をHな気分にさせるわ。やたら
とお話がしたくなるわ。それも、しもねた・・・。けっこう大胆になるわ。

男性は、あまり呑み過ぎてはだめよ。女性を落胆させることになるわ。
でもね、女は平気なのよ。受け身でしょ。男がのぞむまま、したいまま
になれるからね。

うーん、からだがじーんとしてきたわ。背中がむずむず、痒いわ。うし
ろのジッパーを下げてくださる?いいわよ、爪を立てても。

でもまだ、そのー、スカートの裾に手をかけてはいけないわ。私をばっちり焦
(じ)らしてからでもおそくないし、そうすることが、あなたにもたくさんの歓(よろこ)びをあ
げることになるのよ。

あなたが焦(あせ)る気持ちわかるわ。男はすぐやりたくて、だしてしまいたくなるのよね。

さっきの肉ボーまだぴんぴん?うわー、もうかちかち山ねぇ。
すごいわ。でもね、わたしはまだまだよ。

私の背中ひろいでしょ。うぅん?ブラのひもがじゃま?
だめよ、まだ、まだ。引っ掻いてみたり、肌にふれるかふれな
いかの愛撫も好きよ。

耳たぶ、もう夕陽のごとくかしら?私の耳のかたちってどうなの?好き?
ここ、よく観察しておくといいわ。どこかと似ている
かもよ、あらーいやらしい。やーだ、やーだ、くすぐったいわ。ダメダメ、そんな
にしないでよー。

キリュシュ・リキュールのせいだわ、わたしHムードよ。
さあ、いいわよ。淫靡なお話をもっと聞かせて。
あそこ、こっち、あっちと、あなたの愛を待っているわ。

今夜は、フライデイナイト。いいわ、門限なしだわ。
ゆっくり、たっぷり、深くお愉しみしましょうね。




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